「我がターン! 【暴将神エスカリス】の効果発動! ドローフェイズをスキップし、手札を1枚捨てる! 4体目の【暴霊軍トークン】を特殊召喚する!」 虚空より滲み出た悪霊が渦を巻き、また新たな1つの軍勢を形勢してゆく。 「貴様のフィールドにモンスターはいない……エンドフェイズだ! 【暴将神エスカリス】の効果発動! 我が場に存在する【暴霊軍トークン】は4体! よって、デッキからカードを4枚捨ててもらうぞ!」 無慈悲に、機械的にデュエルディスクがデッキの上から4枚を墓地へと捨てる。 デッキに残ったカードは……1枚。 「クハハハハハハ! 貴様のデッキのカードは残り僅か1枚! そしてフィールドには何もなく、手札も1枚のみ! さぁ、怯えろ! 平伏せ! 『暴将神』の前に!」 高らかにズィメルが声を上げる。 現実を告げる。 絶望を突きつける。 が。 「笑えるな」 「何?」 「本当に笑える」 声を上げて、カイトは笑い出した。 「『暴将神』の前についに気が狂ったか?」 「気が狂う? 何を言っているんだ? 俺は至って普通だよ。ただまぁ……今はちとばっかし、気分がいい!」 怪訝な表情を見せるズィメル。 「デッキのカードがどうなったかは全て把握している。何のカードが墓地へ送られたのかも、な」 デュエルディスクをコツコツと叩きながらカイトが言う。 「何が言いたい……?」 「だから、このデッキの残り1枚のカードが何なのかと言う事も解っている。そう解っているんだ。だから気分がいい」 続ける。 「お前はミスを犯した。無駄に【暴霊軍トークン】を呼び出し、俺にこのカードを引かせる事になった。さぁ、見せてやる!」 カイト LP:1500 山札:1 手札:1 場:無し ズィメル LP:4800 山札:20 手札:0 場:【暴将神エスカリス】 【暴霊軍トークン】×4 【天性の閃き】 【神殿を支えるモノ】 「俺のターン!」 デッキに残った最後のカードを引き抜く。 確認する必要は、ない。 「そのカードを合わせたとて、貴様のカードは僅か2枚。それだけで何が出来ると言うのだ!」 「何が出来るかって? 見せてやるよ。装備魔法【竜玉の欠片】発動! ライフを800支払い、墓地から【ラヴァ・ワイバーン】を特殊召喚し、装備する!」 灼熱の気を纏った飛竜が墓地より舞い上がる。 「バーン効果を持ったモンスターか。だが、我がライフは4800。そのカードごときのバーンダメージでは……」 ズィメルの言葉をわざとらしく大きな声で遮り、カイトは続ける。 「【竜玉の欠片】をリリース! 墓地より蘇れ! 【テンペスト・ドラゴン】!」 風が巻き起こり、雨と雷と共に四枚の翼を持った【テンペスト・ドラゴン】が再び現れる。 「何!?」 「レベル4、【ラヴァ・ワイバーン】に、レベル6、【テンペスト・ドラゴン】をチューニング!」 【ラヴァ・ワイバーン】と【テンペスト・ドラゴン】が交わり、その熱気を風が増幅させてゆく…… 「シンクロ召喚? だが、どんなモンスターを呼び出そうとも……」 「決して消える事無き劫火よ! 暴風雨と共に吹き荒れ、その怒りを万物に知らしめよ! シンクロ召喚! 激怒の化身! 【マッド・テンペスト・ドラゴン】!!」 フィールドを熱気が包み込む。 雨が降り出しているというのに、肌がヒリヒリと痛む凄まじい熱気。 濃い湯気が立ち込め、視界が歪む。 「ZIIIIIIIIIIAAAAAAAAAA!!!!!」 現れた紅き激怒の化身、【マッド・テンペスト・ドラゴン】は、その四肢を伸ばし咆哮を上げた。 耳をつんざく、凄まじい咆哮。 それに乗り、更に暑い熱気が吹き荒れる。 「ほぉ……更にバーン能力を強化し、破壊効果まで備えたモンスターか。凄まじい力だ……」 圧倒的な存在感を放つ【マッド・テンペスト・ドラゴン】を前にズィメルは淡々と告げる。 「だが、無駄だ。『暴将神』には届かぬ! 【暴霊軍トークン】は1体破壊できようが、それまでだ!」 この荒れる熱気の中で身動ぎもしない『暴将神』をズィメルは見上げる。 「フン」 説明するのを面倒臭げに、しかしわざとらしく、カイトが言う。 「俺はこのターン、まだ通常召喚を行っていない……手札から、チューナーモンスター、【名残風の巻竜】を召喚!」 小さな風が巻き起こる。 熱気の中では小さいが、確かな風だ。 「チューナー……だと……?」 風の小竜を見て怪訝な顔を見せるズィメル。 それを無視し、カイトは続ける。 「さぁ、その目に焼き付けろ! レベル10、【マッド・テンペスト・ドラゴン】に、レベル2、【名残風の巻竜】をチューニング!」 【マッド・テンペスト・ドラゴン】に【名残風の巻竜】が重なる。 荒ぶる熱風と小さな風、それがどちらも消える事無く1つに交わる。 「レベル合計は12……! 馬鹿な……! そのようなシンクロモンスターがいるなど……!」 「我が名、オオキ・カイトにおいて呼ぶ! 風と雨と雷の荒ぶる皇! 深き眠りより今こそ目覚め、我が敵を打ち砕かん!」 歌舞伎役者のごとく大仰に則を述べ、その力を呼び覚ます。 「シンクロ召喚! 原初の星の皇!!!」 熱風が消えた。 雨が止む。 雷も鳴る事を止めた。 その存在の為に。 「何だ……これは……!」 巨龍。 鋭いシルエット。 数え切れない程の無数の角を、まるで王冠のように頭に頂き、全身に蒼い鱗を纏っている。 脚はない。 長大な胴と尾。 巨大な1対の膜の張った翼を持つ姿は、まるでワイアームの様にも見える。 しかし、その翼からは翼竜の鉤爪のように腕が伸びていた。 左右の翼にそれぞれ2本の腕。 しかも腕はそれぞれ3つの関節を持っている。 異形だ。 しかし、おぞましさは、ない。 威厳こそ感じられ、おぞましさなど微塵も感じられない。 それどころか、美しくさえ見える。 羽ばたく事無く宙に佇む巨龍――【タイラント・テンペスト・ドラゴン】はただ、そこにあった。